CBDやCBDオイルのアイソレートと ブロードスペクトラム

簡単に言えば、これらの表記はCBDやCBDオイルに「ヘンプのどの栄養成分が含まれているか」を表しています。
アイソレートと書かれていればCBDのみ、ブロードスペクトラムと書かれていればTHC以外のヘンプの成分、フルスペクトラムと書かれていればTHCも含むヘンプの成分が含まれていることを示しています。
アイソレート・ブロードスペクトラム・フルスペクトラムを様々な点から比較してみたいと思います。
原料
アイソレート・ブロードスペクトラム・フルスペクトラムの原料には、アメリカやヨーロッパなどで栽培されている0.3%以下のTHCを含有するヘンプが使用されています。加えて、日本に輸入することができるCBDやCBDオイルはヘンプの「茎」および「種子」から抽出された成分が使用されている製品に限ります。ヘンプの花穂や葉などから抽出された成分が使用されたCBDやCBDオイルは大麻に該当する場合があり規制の対象となることがあります。


抽出・精製方法
アイソレート・ブロードスペクトラム・フルスペクトラムの製造工程は途中まで共通しています。まず、第一段階では原料となるヘンプから全成分を抽出します。近年では安全性が高く効率良く純度の高いCBDを抽出することができる「超臨界二酸化炭素抽出法」を採用している大手メーカーが増えています。
超臨界二酸化炭素抽出法は、超低温で液化した二酸化炭素に原料であるヘンプを浸し、ヘンプからカンナビノイドやビタミン、テルペンなどを含む全栄養成分を抽出します。オイルやエタノール、安価なブタンやヘキサンなどの溶媒を使用した抽出方法を採用しているメーカーもありますので、購入を考えているCBDやCBDオイルはどのように抽出されているかを確認してみると良いでしょう。
第二段階では、抽出されたヘンプの成分にエタノールなどを加え、抽出物に含有されるワックスや脂肪分などの不純物を除去します。その後、第三段階では第二段階でできた抽出物に含まれる不活化状態のカンナビノイド類(CBDAやTHCAなど)を加熱によってCBDやTHCに変化させます(脱炭酸)。これでフルスペクトラムの完成です。
アイソレートやブロードスペクトラムはここからさらに工程が重ねられて作られます。アイソレートを作るには、第三段階で完成したフルスペクトラムを蒸留(沸点の違いを利用することで混ざり合った2種類以上の物質を分離する方法)することでCBDのみを分離します。分離されたCBDを再結晶化させ、白いパウダー状になったものがアイソレートと呼ばれます。
一方でブロードスペクトラムは第三段階で完成したフルスペクトラムからTHCのみを除去して作られます。フルスペクトラムからTHCを除去する方法は「クロマトグラフィー」と呼ばれる分離方法で行われるのが最も一般的です。
クロマトグラフィーとは、2種類以上の性質の異なる成分が混合された状態の物質を、様々な溶媒を使用して各成分ごとに分離する方法の総称です。



成分
それぞれに含まれる成分は以下の通りです。
- アイソレート:ヘンプから抽出された成分からCBDのみを分離したもので、99%以上CBDで構成されている(取り除ききれないヘンプの組織などが1%未満含有されることがある)
- ブロードスペクトラム:ヘンプから抽出されたCBDを含む様々なカンナビノイド類やビタミン、テルペン、フラボノイドなどの成分を含有しているが、THCは除去されている。組成は製品による
- フルスペクトラム:ヘンプから抽出されたCBDを含む様々なカンナビノイド類やビタミン、テルペン、フラボノイドなどの成分を含有し、0.3%以下のTHCも含まれている。組成は製品による
価格
原料の段階ではアイソレートの方が値段が安く、ブロードスペクトラムやフルスペクトラムの方が値段が高い傾向にあります。アイソレートはフルスペクトラムよりも抽出・精製の工程が多いのに、なぜアイソレートの方が安いのかというはっきりした理由は分かりかねますが、含有される成分(CBG、CBNなど)が多いほど高価になっています。
効果
アイソレートを使用した場合に得られるのはCBDの効果のみですが、CBD以外に複数の栄養成分を含有するブロードスペクトラムやフルスペクトラムは「アントラージュ効果」が期待できるとされています。アントラージュ効果とは、成分を単体で摂取するよりも複数の成分を同時に摂取すると、それぞれの成分が相互作用を引き起こして効果が増強されることを指します。そのため、CBD以外のカンナビノイドやテルペンなどを含有するブロードスペクトラムやフルスペクトラムはアイソレートと比べて強い効果が期待できるとされています。


ブロードスペクトラム VS アイソレート
ブロードスペクトラムの謳い文句とも言えるアントラージュ効果が有る場合と無い場合で、あまり効果に差がないというものの具体的にどの程度数値として違うのか、多くの方が気になるポイントではないでしょうか。
2021年にアメリカで約3,000人の成人が参加し、13種類の市販のCBD製品を用いてCBDの効果を検証する大規模な研究調査が行われました。13種類の市販のCBD製品の中から1種類が1人の被験者に配布され、4週間に渡って使用した場合の幸福感、QOL、痛み、睡眠、不安の5点におけるCBDの効果を調査するものです。この研究では一般的なCBDの効果を検証するだけでなく、13種類のそれぞれのブランドごとの効果も分析されます。研究のために提供された13種類のCBD製品はアイソレート、ブロードスペクトラム、フルスペクトラムなど様々です。
2022年6月の段階ですでに結果を公表している濃度10%のアイソレートの製品を提供したA社の製品と、濃度8.3%のフルスペクトラムのCBDオイルを提供したB社の製品を比較してみたいと思います。A社が公表した結果によると、A社のアイソレートCBDオイルを4週間使用した被験者グループにおいて、平均で幸福感は70%、不安は49%、睡眠の質は27%、痛みは25%改善されたとのことです。 一方でB社が公表した結果では、B社のフルスペクトラムCBDオイルを4週間使用した被験者グループにおいて、平均で幸福感は72%、不安は54%、睡眠は33%、痛みは26%改善されたとのことです。
アイソレートは使い勝手が良い、THCの混入を避けられる可能性が高い、比較的値段が安いといったメリットが多くあります。そして、一般的にアイソレートのデメリットといえばCBDしか入っていないためアントラージュ効果が期待できないことが挙げられます。
