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カンナビノイド受容体以外に作用する受容体

体内には様々な神経伝達物質受容体がありますが、現段階でCBDが何らかの形で作用することがわかっているものはどのようなものがあるのでしょうか。

セロトニン受容体の5-HT1A

セロトニンは体内で様々な役割を担っています。セロトニン受容体の種類は体内に複数ありますが、CBDが作用することがわかっている5-HT1Aは、睡眠や食事、不安、体温の調節などに関わる受容体です。また、セロトニンは様々な神経伝達物質のバランスを調節する役割を担っています。

興奮したり恐怖を感じたりすると分泌されるドーパミンやノルアドレナリンなどを、セロトニンの分泌量を増加させることによって抑制させます。したがって、セロトニン不足になると不安が強い状態が持続し、うつ病やパニック障害、睡眠障害などが引き起こされます。

過去に行われた複数の研究より、CBDやCBDオイルは不安を軽減したり睡眠障害を改善することができる可能性が高いとされており、副作用の強い抗不安薬や抗うつ薬、睡眠薬などの代わりになることが期待されています。

バニロイド受容体のTRPV1

TRPV1はカプサイシンなどによる痛み刺激をコントロールする受容体です。

CBDやCBDオイルは疼痛を緩和させる作用があることが知られているのは、TRPV1がCBDの疼痛緩和に関わる重要な受容体として働いているためだと考えられています。ラットを用いた研究により、CBDがTRPV1を活性化することで、通常では痛みとして感じないような些細な刺激を痛みとして感じる「アロディニア」を緩和したことが報告されています。アロディニアは帯状疱疹後神経痛でも頻繁に見られる症状です。

CBDやCBDオイルは、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)などの鎮痛薬が効きにくかったり、長期間服用することで副作用の心配があったりする疼痛に使用されることが期待されています。

GABAA受容体

GABAは心身にリラックスをもたらす抑制性の神経伝達物質であり、ストレスや不安、睡眠などに関わっています。GABAA受容体に作用する一般の処方薬ではデパス(エチゾラム)が広く知られています。デパスは睡眠薬や抗不安薬として多くの診療科で処方され、正しく服用すれば効果の高い薬ではありますが、乱用や強い副作用、激しい離脱症状など様々な問題を抱えている薬です。

CBDやCBDオイルはこのデパスの代わりとして睡眠障害や不安などの症状を改善できるのではないかと考えられています。

アデノシンA2A受容体

アデノシンは体内でエネルギー(アデノシン三リン酸)が分解された後にできる物質で通称「エネルギーの燃えかす」です。エネルギーを使うことで脳内に蓄積されるアデノシンは、アデノシンA2A受容体と結合すると睡眠中枢に働きかけて深い眠りをもたらしします。

アデノシンの役割は睡眠改善だけでなく、抗炎症作用や血管拡張作用、細胞や組織を傷害から保護する作用などもあります。また、脳梗塞や脳挫傷(脳の打撲)などの脳の障害において脳を保護する重要な役割もあります。前述したECSはアデノシンの分泌にも関わっています。内因性カンナビノイドであるAEAは、アデノシンの分泌量を増加させることがわかっていますが、その正確なメカニズムの全貌はまだ解明されていません。現段階では、脳の前脳基底部にあるCB1を活性化するとアデノシンの分泌量を増加させることが報告されています。しかし、アデノシンはすぐに代謝される特性があり、アデノシンが多く分泌されて濃度が高くなるだけでは短時間でその効果は消失します。CBDは、アデノシンA2A受容体を活性化することでアデノシンの受容体への作用を促進すると同時に、細胞に取り込まれて一気に代謝されてしまうことを阻害する作用があります。

AEAやCBDのこれらの作用により、長時間アデノシンを効率良く脳内で利用することができると考えられています。

CB1やCB2以外のGPCR

上の項目でも解説したGPCRは、CB1やCB2以外にも数多くの種類が体内に存在し、それらにもCBDが作用する可能性が高いとされています。

GPCRはまだ多くの研究を必要とする分野ではありますが、その中でGPR55はすでに第3のカンナビノイド受容体とも言われています。GPRとは上で解説したGタンパク質を意味します。GPR55にはTHCはアゴニストとして、CBDはインバース・アゴニストもしくはアゴニストとして作用することがわかっています。GPR55が関わる疾患の中で、特に関心が高いのはがんの治療でしょうか。がん細胞にGPR55が多く発現するとがん細胞の増殖に繋がるとされており、GPR55は治療の核となるのではないかと注目されています。GPR55に対してインバース・アゴニスト(アンタゴニスト)として働きかけるCBDにも抗がん作用があると考えられるのも自然なことです。

現段階では、抗がん剤とCBDとの組み合わせでGPR55を持つがん細胞の縮小に成功したことが報告されています。また、他のGPCRではGPR18もカンナビノイド受容体としての性質があるのではないかと考えられています。更に、現段階ではアブノーマル・カンナビジオール(通常のCBDと同じ元素を持つが構造が違う)やAEAによって活性化することがわかっています。