CBDやCBDオイルとリウマチ
リウマチとはどのような病気?
簡単に言うとリウマチ(関節リウマチ:RA)は膠原病の一種です。自己免疫疾患、リウマチ性疾患、結合組織疾患という疾患の分類の枠組みがあり、その3種類の性質を全て兼ね備えた疾患が膠原病(RA、全身性エリテマトーデス、血管症、皮膚筋炎、強皮症など)です。診療科の表記で「リウマチ科・膠原病内科」のように分けられていることもあります。その理由はRAの患者数が他の膠原病の総患者数よりも多いことや症状が他の膠原病と違い関節や骨、筋肉に限定していることも多いためとされています。
RAは手足の指関節に力が入りづらくなる「こわばり」から始まり、徐々に関節や骨の痛みや変形などが生じます。炎症は全身に広がることもあり、血管や肺、心臓、消化器官、眼球などに及ぶこともあります。私たちの体内には身体を守るための免疫システムがあります。通常は異物の侵入や組織の損傷などが起こった際に、炎症を起こすことで身体の修復を早めたり異物を外へ排出しやすくします。RAを患った場合は、免疫の異常な働きにより自己の正常な組織が攻撃され、関節部の軟骨組織や骨の破壊を招きます。発症のリスクに遺伝や喫煙・食習慣などがあると言われていますが現段階でははっきりとわかっていません。
RAは30〜50代の女性が最も多く発症し、全体でも女性患者は男性患者のおよそ4倍ほどです。女性ホルモンであるプロラクチンやエストロゲンが発症に関わっているとされ、妊娠や閉経などを機に発症することもあります。現在RAに対して世界で最も多く使用されている抗RA薬はメトトレキサート(リウマトレックス)という免疫抑制剤です。この薬の登場によりRAの症状である関節組織の損傷を遅らせることができるようになりました。
リウマトレックスは効果の高い薬ですが、薬剤性の間質性肺炎や骨髄抑制などの強い副作用があり、高齢者には投与が危険である問題があります。また免疫抑制剤であるため感染しやすくなる危険性もあります。また、抗炎症作用の強いステロイド剤が投与されることもあります。ステロイドは多くの副作用が知られていますが、特に免疫抑制剤との併用は感染の危険性が非常に高くなります。



CBDやCBDオイルはリウマチにも作用しますか?
CBDは大麻などの植物から抽出されるカンナビノイドという成分です。植物から抽出されたCBDをオリーブオイルやココナッツオイルなどのキャリアオイルと混合した製品がCBDオイルです。麻などの植物には大麻取締法で規制される成分であるTHCも含まれていますが、CBDとTHCは体内で全く違った作用をもたらします。CBDには向精神作用はありません。
植物から抽出されるカンナビノイドは人の体内に存在するエンドカンナビノイドシステム(ECS)に直接的、または間接的に作用し、疼痛、炎症、ストレス、不安、睡眠、吐き気などの「調節」を行います。元々ECSはアナンダミド(AEA)や2-AGという内因性カンナビノイドが主に脳や中枢神経系に発現するCB1、免疫細胞や末梢神経系に発現するCB2というカンナビノイド受容体を活性化することで機能します。特に免疫細胞のCB2は炎症や炎症性疼痛の抑制に関わっています。
CBDは直接CB1やCB2に作用することはほとんどありませんが、AEAや2-AGを破壊する酵素を抑制することで分泌量を増加させたり、様々な神経伝達物質の受容体などに作用したりします。また、CBDは神経や細胞などの損傷を引き起こす活性酸素を抑制します。
THCは日本では治療に用いることができませんが、直接脳や神経のCB1に作用するため鎮痛効果や制吐作用は強く、海外ではがんなどの強い痛みや吐き気などの薬の副作用を抑制するために使用されることがあります。
ここでのテーマであるRAの治療は、痛みを軽減することと炎症を引き起こす免疫の働きを正常化させることが鍵となります。2006年に初めてCBDおよびTHCがRAに対してどのように作用するかが検証されました。被験者らはCBDとTHCの混合薬であるサティベックス(Sativex)という薬を5週間使用し痛みの軽減や睡眠の改善を実感しました。また、副作用はほとんどなく現れた症状も軽度のものでした。
2016年にはCBDの関節痛への効果を検証する研究は関節炎のラットを用いて行われました。CBDジェルを経皮的に塗布することでラットの関節痛や関節炎の軽減が報告されました。そして、CBDは痛みや炎症を緩和する対処療法のためだけではなく、RAや変形性関節症などの関節の病気で、関節の破壊や変形そのものに関わるとされる「滑膜細胞の増殖」を抑制できる可能性があることが示されました。関節は動作による衝撃を軽減するために軟骨で覆われ、さらにその間の空間は関節液で満たされています。滑膜は関節液が漏れないようにするためのカバーの役割を果たしています。増殖した滑膜は関節の破壊や変形に加え炎症性物質(サイトカイン)を産生し、RAの症状を進行させます。
2020年9月に発表された研究では、CBDは関節滑膜の異常増殖およびサイトカインの分泌を抑制したと報告されました。この研究がさらに進められれば、現在抗RA薬として投与されている副作用の強い免疫抑制剤やステロイド剤の代わりのにCBDやCBDオイルが処方される日がくるかもしれません。
さらに、RA患者の多くは睡眠障害を抱えているとされています。CBDやCBDオイルは心身をリラックスさせることで睡眠を改善する効果があります。RAは発見や治療開始が早ければコントロールが可能な病気です。